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2026.07.10

年収の壁が変わる 配偶者控除・扶養控除の基準額はどうなる?

はじめに

前回のコラム(「年収の壁が変わる 令和8年度改正で知っておくべきこと」)では、令和8年度税制改正による所得税の「年収の壁」の変更についてご紹介しました。基礎控除と給与所得控除の引き上げにより、所得税がかかり始める年収の壁は160万円から178万円に変わります。

今回は、その改正が配偶者控除・扶養控除にどう影響するかを整理します。配偶者や扶養親族側の所得要件も引き上げられるため、これまで扶養から外れていたパート従業員や家族の働き方にも関係してくる改正です。

「本人の壁」と「扶養の壁」は別物

配偶者控除・扶養控除の対象になるかどうかは、配偶者や扶養親族の合計所得金額が一定額以下であることが条件です。前回のコラムで扱った「178万円の壁」は給与所得者本人の税金の話でしたが、今回の壁は配偶者・扶養親族側の話であり、別の計算式で決まります。

本人の壁(前回のコラム) 扶養の壁(今回のコラム)
誰の壁か 給与所得者本人 配偶者・扶養親族
令和8年・9年 178万円 136万円
内訳 基礎控除104万円
(本則62万円+特例42万円)
+給与所得控除74万円
所得要件62万円
(本則のみ)
+給与所得控除74万円

2つの壁の差は42万円ありますが、これはちょうど、令和8年・9年限定で本人の基礎控除だけに上乗せされる特例分と同じ金額です。基礎控除には、本則部分(58万円→62万円)に加えて、令和8年・9年限定の特例(最大42万円)が上乗せされます。しかしこの特例は納税者本人が自分の税額を計算する際の話であり、配偶者・扶養親族側の所得要件には反映されません。配偶者・扶養親族側の所得要件は、基礎控除の本則部分の引き上げ分(58万円→62万円)だけが反映される仕組みです。

給与収入ベースで見ると、壁は次のように変わります。

改正前の壁:123万円 = 所得要件58万円 + 給与所得控除65万円

改正後の壁:136万円 = 所得要件62万円 + 給与所得控除74万円

配偶者控除・配偶者特別控除の壁

配偶者の給与収入に応じた壁は、以下のように変わります(国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」令和8年4月)。

令和7年 令和8年・9年 内容
配偶者控除の壁 123万円 136万円 これを超えると配偶者特別控除に切り替わる
配偶者特別控除・満額(38万円)の壁 160万円 169万円 これを超えると控除額が段階的に減っていく
配偶者特別控除の壁 201万円 207万円 これを超えると控除がゼロになる

136万円を超えたからといって控除が急になくなるわけではなく、169万円までは配偶者控除と同じ38万円が維持され、207万円まで段階的に控除額が減っていきます。

※配偶者控除・配偶者特別控除には、控除を受ける本人側の所得制限があります(国税庁タックスアンサーNo.1191No.1195)。本人の合計所得金額が900万円以下なら控除額は変わりませんが、900万円超950万円以下で控除額が減り、950万円超1,000万円以下でさらに減り、1,000万円を超えると配偶者控除・配偶者特別控除のどちらも受けられません。

扶養控除・特定親族特別控除の壁

一般の扶養親族についても、配偶者と同様に壁が引き上げられます。

令和7年 令和8年・9年
扶養控除の壁 123万円 136万円

136万円を超えると扶養控除の対象から外れます。

大学生年代の子など、19歳以上23歳未満の扶養親族(特定親族)については、令和7年度改正で新設された「特定親族特別控除」の基準額もあわせて引き上げられます。

令和7年 令和8年・9年 内容
扶養控除(63万円)の壁 123万円 136万円 これ以下なら扶養控除63万円がそのまま使える
特定親族特別控除・満額(63万円)の壁 150万円 159万円 これを超えると控除額が段階的に減っていく
特定親族特別控除の壁 188万円 197万円 これを超えると控除がゼロになる

配偶者特別控除と同じく、136万円を超えても控除がすぐになくなるわけではなく、197万円まで段階的に減っていく仕組みです。

※扶養控除・特定親族特別控除には、配偶者控除・配偶者特別控除のような本人側の所得制限がありません(国税庁タックスアンサーNo.1180No.1177)。納税者本人の所得がいくら高くても、扶養親族側の所得要件さえ満たせば控除を受けられます。

注意:配偶者は扶養控除の対象にはならない

ここで見落とされがちな点があります。扶養控除の対象となる「扶養親族」は、税法上「配偶者以外の親族」と定義されています。つまり、本人の所得が高く配偶者控除・配偶者特別控除が使えない場合でも、配偶者を扶養控除で代わりに拾うことはできません。

高所得の方ほど、配偶者に関する所得控除がまるごとなくなる可能性がある一方、子や親などの扶養控除・特定親族特別控除は所得に関係なく使えるという構造になっています。

結局、自分の場合はどうなるのか

いくつかのケースで確認してみましょう。なお、本人側の所得制限は「合計所得金額」で判定するため、給与収入とは金額が異なる点に注意してください。

ケース1:給与収入2,000万円(合計所得金額1,805万円)の会社員に、パート収入140万円の配偶者がいる場合

本人の合計所得金額が1,000万円を超えるため、配偶者控除・配偶者特別控除は受けられません。配偶者を扶養控除に振り替えることもできないため、配偶者に関する所得控除はゼロになります。

ケース2:給与収入2,000万円(合計所得金額1,805万円)の会社員に、19歳の大学生の子(アルバイト収入140万円)がいる場合

特定親族特別控除には本人の所得制限がないため、子の給与収入が197万円以下であれば、本人の所得がいくら高くても控除を受けられます。140万円は満額の壁である159万円以下のため、満額の63万円が適用されます。

ケース3:給与収入1,095万円以下(合計所得金額900万円以下)の会社員に、パート収入180万円の配偶者がいる場合

本人の所得制限には該当しないため、配偶者特別控除の対象です。配偶者の給与収入180万円は169万円超207万円以下の範囲に入るため、38万円より少ない金額ですが控除を受けられます。

同じ「配偶者・子の収入が高い」状況でも、本人の所得水準や続柄によって結果が大きく変わります。

まとめ

・「本人の壁」(178万円)と「扶養の壁」(136万円)は別の計算式で決まる

・差の42万円は、本人の基礎控除にのみ上乗せされる令和8年・9年限定の特例分

・配偶者控除の壁:123万円→136万円(満額の壁は169万円、上限は207万円)

・扶養控除の壁:123万円→136万円

・特定親族特別控除(19〜23歳未満)の壁:満額の壁は159万円、上限は197万円

・配偶者控除・配偶者特別控除には本人の所得制限あり(1,000万円超で対象外)

・扶養控除・特定親族特別控除には本人の所得制限なし

・配偶者は扶養控除の対象外のため、配偶者控除が使えない場合の代替はできない

※本コラムは令和8年7月10日現在の法令等(国税庁タックスアンサーNo.1180・No.1191・No.1195・No.1177、国税庁「源泉所得税の改正のあらまし」令和8年4月)に基づいて作成しています。今後の法令改正等により内容が変わる場合があります。

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