はじめに
夫婦ともに給与収入が850万円を超えていて、23歳未満のお子さんが1人いる方。お子さんの扶養控除は、どちらか一方の申告書にしか書いていませんか? もしそうであれば、本来受けられるはずの控除を見落としている可能性があります。
今回は少し雑談的な話も交えつつ、その見落としについてご紹介します。
こんな方は特に確認をおすすめします
・夫婦ともに給与収入が850万円を超えている
・23歳未満のお子さんが1人以上いる
・ご自身または配偶者が2か所給与などで確定申告をしている
・お子さんの扶養控除は夫婦どちらか一方の申告書にしか記載していない
所得金額調整控除とは
所得金額調整控除は、その年の給与収入が850万円を超える人のうち、以下のいずれかに該当する場合に、給与所得の金額から一定額を差し引ける制度です(国税庁タックスアンサーNo.1411)。
・本人が特別障害者に該当する
・年齢23歳未満の扶養親族がいる
・特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる
控除額の計算式は以下のとおりです。
{給与等の収入金額(1,000万円超の場合は1,000万円)- 850万円}× 10%
給与収入が1,000万円以上であれば、控除額は上限の15万円になります。
夫婦両方とも受けられる、という見落としやすいポイント
ここが今回一番お伝えしたいポイントです。
扶養控除は、同一生計内で1人の子について夫婦のどちらか一方しか適用できません。この感覚のまま所得金額調整控除も考えてしまうと、「子どもの扶養は夫の申告書に書いたから、妻の方は関係ない」と誤解してしまいがちです。
しかし、所得金額調整控除には扶養控除のような「一方のみ」という制限がありません。国税庁のタックスアンサーにも、次のように明記されています。
「この控除は、扶養控除と異なり、同一生計内のいずれか一方のみの所得者に適用するという制限がありません。したがって、例えば、夫婦ともに給与等の収入金額が850万円を超えており、夫婦の間に1人の年齢23歳未満の扶養親族である子がいるような場合には、その夫婦双方が、この控除の適用を受けることができます。」(国税庁タックスアンサーNo.1411)
つまり、夫婦ともに給与収入850万円超で、23歳未満の子が1人いる場合、扶養控除の記載を夫のみにしていたとしても、妻も所得金額調整控除は別途受けられるということです。
もし見落としていた場合、どのくらいの影響があるか
給与収入1,000万円以上の場合、控除額は上限の15万円です。この15万円分、本来より多く所得税・住民税を払っていた可能性があります。
税率のレンジで試算すると、次のようになります。
| 所得税率 | 住民税率 | 合計税率 | 過大納付額の目安 |
|---|---|---|---|
| 10% | 10% | 20% | 約3.0万円 |
| 23% | 10% | 33% | 約4.95万円 |
| 33% | 10% | 43% | 約6.45万円 |
| 45% | 10% | 55% | 約8.25万円 |
所得水準にもよりますが、おおよそ3万円〜8万円程度の過大納付になっている可能性があります。
確認方法
適用漏れがないか確認する一番簡単な方法は、確定申告書の第一表を見ることです。「収入金額等」の給与欄(オ)の右側に「区分」という欄があり、所得金額調整控除が適用されていればここに「1」と記入されています。
給与収入が850万円を超えているのに、この区分欄が空欄であれば、控除が適用されていない可能性が高いです。医師など2か所給与でご自身が確定申告をされている場合、申告書作成時にこの区分欄への入力を忘れると控除自体が漏れてしまいます。
見落としに気づいたら
過去5年分であれば、「更正の請求」という手続きにより、納めすぎた税金の還付を受けられます。国税庁の確定申告書等作成コーナーでは、提出済みの申告書を訂正して作成し直すこともできます。
対象になりそうな場合は、申告書を手元に用意して、給与区分欄を確認してみてください。
まとめ
・所得金額調整控除は、給与収入850万円超で23歳未満の扶養親族がいる場合等に適用できる
・扶養控除と異なり、夫婦双方がそれぞれ適用を受けられる(国税庁タックスアンサーNo.1411)
・給与収入1,000万円以上なら控除額は上限の15万円
・見落としていた場合、税率次第で約3万円〜8万円程度の過大納付の可能性がある
・確定申告書第一表の給与区分欄(区分1)の記載有無で適用状況を確認できる
・過去5年分であれば更正の請求により還付を受けられる場合がある
※本コラムは令和8年7月15日現在の法令等(国税庁タックスアンサーNo.1411・No.2676)に基づいて作成しています。今後の法令改正等により内容が変わる場合があります。
