コラム
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2026.07.01

医療法人化を考えているなら共済加入前に知っておきたいこと

はじめに

「節税にもなるし、将来のためにもなる」と聞いて、小規模企業共済や経営セーフティ共済への加入を検討している個人開業医の方は多いのではないでしょうか。掛金が全額必要経費・所得控除になり、積み立てたお金は将来戻ってくる。個人事業主としては申し分のない制度です。

ただし、将来的に医療法人化を考えているなら、加入前に知っておくべきことがあります。今回は2つの制度それぞれの仕組みと、医療法人化に伴う注意点を整理します。

小規模企業共済

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や個人事業主が廃業や退職後の生活に備える退職金制度で、中小機構が運営しています。掛金は月1,000円から7万円まで、年間最大84万円が所得控除の対象になります。

医療法人の役員は加入できない

小規模企業共済は、直接営利を目的としない法人の役員は加入対象から除外されています。医療法人の役員(理事長・理事)はこれに該当するため、加入できません。個人開業医のうちは加入できますが、医療法人化した時点で加入資格を失います。

医療法人化したときの取扱い

小規模企業共済は、要件を満たせば法人成り後も契約を引き継ぐことができます。しかし医療法人および医療法人の役員は加入資格がないため、引き継ぐことができません。

この場合、「個人事業を法人成りした結果、加入資格がなくなった」という請求事由に該当し、「準共済金」として受け取ることになります(中小機構)。準共済金を一括で受け取る場合は退職所得扱いとなるため、退職所得控除が適用されます。

掛金納付月数が12カ月未満の場合は掛け捨てとなり、準共済金は支給されません。医療法人化の直前に加入した場合はこの点に注意が必要です。

準共済金と解約手当金の違い

なお、法人成りした結果、加入資格がなくならなかった場合に解約をすると「解約手当金」として受け取ることになります。解約手当金は掛金納付月数240カ月(20年)未満の場合、掛金合計額を下回ります。医療法人成りで準共済金として受け取る場合は、掛金納付月数に関わらず元本割れが生じない点で有利です。

掛金月額1万円で加入した場合の例(中小機構より) 準共済金 解約手当金
5年加入(掛金合計60万円) 600,000円 480,000円
10年加入(掛金合計120万円) 1,200,000円 1,020,000円
15年加入(掛金合計180万円) 1,800,000円 1,665,000円
20年加入(掛金合計240万円) 2,419,500円 2,400,000円

※上記は基本共済金のみの金額です。運用収入等に応じた付加共済金が加算される場合があります。また解約手当金には付加共済金の加算はありません。

経営セーフティ共済

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐための制度で、中小機構が運営しています。取引先が倒産した際、無担保・無保証人で掛金の10倍(最大8,000万円)まで借入れができます。掛金は月5,000円から20万円まで自由に設定でき、総額800万円まで積み立て可能です。掛金は全額損金・必要経費の対象です。

医療法人は加入できない

経営セーフティ共済は医療法人が加入対象外です。個人開業医のうちは加入できますが、医療法人化した時点で加入できなくなります。

医療法人化したときの取扱い

経営セーフティ共済も、要件を満たせば法人成り後に共済契約を承継することができます。しかし医療法人は加入対象外であるため、承継することができません。

この場合、「事業の全部譲渡」にあたり、契約は自動的に「みなし解約」となります。みなし解約は通常の任意解約よりも有利な支給率になっています。(中小機構より)

掛金納付月数 任意解約 みなし解約
1〜11カ月 0% 0%
12〜23カ月 80% 85%
24〜29カ月 85% 90%
30〜35カ月 90% 95%
36〜39カ月 95% 100%
40カ月以上 100% 100%

みなし解約であれば36カ月(3年)以上の加入で支給率100%となり、元本割れしません。任意解約では40カ月以上必要なことと比較すると、有利な条件です。

前納をしている場合の注意点

充当月がまだ到来していない前納分は掛金納付月数に含まれません。実際の加入月数と納付月数が異なる場合があるため、前納をしている方は特に確認が必要です。

解約手当金は受け取った年度の事業所得の収入として課税対象になります。まとまった金額が一度に収入に加わるため、医療法人化の直前に利益が多い年度と重なると、想定以上の税負担になることがあります。

結局、どう考えればいいか

将来的に医療法人化を予定しているなら、2つの共済への加入は「期間限定の節税策」と割り切って考えるのが現実的です。経営セーフティ共済であれば、最低36カ月加入してから法人成りするスケジュールを意識しておくと、みなし解約で元本割れを避けられます。

共済の解約による収入が発生する年度に、他の損金・経費と重なるよう設計できれば、税負担を抑えることも可能です。

まとめ

小規模企業共済

・医療法人の役員は加入できない

・医療法人は加入資格がないため法人成り後の引き継ぎができず、準共済金として受け取ることになる

・準共済金を一括受取する場合は退職所得扱いで退職所得控除が適用される

・掛金納付月数12カ月未満は掛け捨て

経営セーフティ共済

・医療法人は加入できない

・医療法人は加入資格がないため法人成り後の承継ができず、みなし解約になる

・みなし解約は掛金納付月数36カ月以上で元本割れしない(任意解約は40カ月以上)

・前納分の充当月が到来していない期間は掛金納付月数に含まれない

・解約手当金は受け取り時に事業所得として課税される

※本コラムは令和8年6月17日現在の法令等に基づいて作成しています。今後の法令改正等により内容が変わる場合があります。

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