はじめに
令和8年4月1日より、食事提供に関する非課税限度額が引き上げられました。
昭和59年以来、実に約40年ぶりの改正です。物価上昇や食料品の価格高騰が続く中、月額3,500円という従来の限度額は実態に合わなくなっていました。今回の改正で非課税限度額は月額7,500円へと倍増しており、福利厚生として食事補助制度の導入・見直しを検討する絶好のタイミングといえるでしょう。
食事提供が非課税になる仕組み
会社が従業員等に食事を提供する場合、その経済的利益は原則として給与課税の対象となります。ただし、以下の2つの要件をともに満たす場合に限り、課税されません。
✅ 要件①:従業員等が食事の価額の50%以上を負担していること
✅ 要件②:会社の負担額が月額3,500円以下(税抜き)であること
どちらか一方を満たすだけでは非課税になりません。2つをセットで満たすことが条件です。なお、残業・宿日直に伴い支給する食事については、別途、給与課税しない取扱いが認められています。
今回の改正で何が変わったのか
令和8年4月1日以後に支給する食事から、要件②の非課税限度額が月額3,500円から月額7,500円へ引き上げられました。会社と従業員が折半で負担する場合、非課税で提供できる食事の価額はひと月あたり7,000円から15,000円へと大きく広がります。
| 改正前 | 改正後(令和8年4月1日〜) | |
|---|---|---|
| 会社負担額 | 3,500円 | 7,500円 |
| 従業員負担額 | 3,500円 | 7,500円 |
| 非課税で提供できる食事の価額(合計) | 7,000円 | 15,000円 |
従業員の税負担を増やすことなく、より充実した食事補助を実現できるようになります。
また、深夜勤務(午後10時〜翌日午前5時)に伴う夜食代についても改正がありました。会社に調理施設がないなどの理由で夜食の現物支給が難しい場合、金銭で支給することが認められており、その非課税限度額が1回300円から1回650円へ引き上げられています。
深夜勤務のある会社にとっては、食事提供の改正と合わせて確認しておきたいポイントです。
要件を満たさない場合はどうなるのか
要件①②のいずれかを満たさない場合、食事の価額から従業員の負担額を差し引いた差額分が給与として課税され、会社に源泉徴収の義務が生じます。
ケースA:要件①を満たさない場合
食事の価額5,000円、従業員負担2,000円(負担割合40%)の場合、要件①(50%以上)を満たさないため、差額の3,000円が給与として課税されます。
ケースB:要件②を満たさない場合
食事の価額20,000円、従業員負担10,000円(負担割合50%)の場合、要件①はクリアしていますが、会社負担額が10,000円となり要件②(7,500円以下)を超えてしまいます。この場合、超過した2,500円だけでなく、会社負担額の10,000円全額が給与として課税されます。
⚠️ よくある誤解と正しい取扱い
❌ よくある誤解:7,500円を超えた2,500円分だけが課税される
✅ 正しい取扱い:会社負担額の10,000円全額が課税される
制度を設計する際は、会社負担額が7,500円以内に収まるよう注意が必要です。
実務上の注意点
食事代の「金銭支給」は非課税にならない
食事代として現金を渡したり、給与に食事手当として上乗せしたりする場合、金銭支給は非課税の対象外となります。支給した全額が給与として課税されますので、注意が必要です。
「食事手当」として毎月一律で現金支給している会社は少なくありません。非課税のつもりで設けた制度が、税務上は給与扱いになっているケースもありますので、現在の運用方法を今一度ご確認ください。
詳細は国税庁タックスアンサー No.2594「食事を支給したとき」をご参照ください。
食事の価額の算定方法
食事の価額は、支給時の時価で算定します。弁当など業者から購入する場合は業者への購入金額(税抜き)、社員食堂の場合は食事を作るために直接かかった費用の合計額(税抜き)が対象となります。
要件②の判定はいずれも消費税を除いた税抜き金額で行います。弁当(軽減税率8%)と社員食堂(標準税率10%)では税率が異なるため、それぞれ消費税を除いた計算が必要です。詳しい計算方法は国税庁タックスアンサー No.2594-1「食事を支給したときの非課税限度額の判定」をご参照ください。
まとめ
今回の改正ポイント
・食事提供の非課税限度額:月額3,500円 → 月額7,500円(令和8年4月1日〜)
・深夜勤務時の夜食代(金銭支給の特例):1回300円 → 1回650円(令和8年4月1日〜)
・食事代の金銭支給は非課税の対象外(夜食代の特例を除く)
昭和59年以来、約40年ぶりの大幅改正となります。すでに制度がある場合は会社負担額と新しい限度額を照らし合わせ、新たに導入を検討している場合は現物支給として設計することが非課税の前提条件となります。この機会にぜひ一度、自社の食事補助制度を見直してみてください。
※本コラムは一般的な情報提供を目的としており、個別の税務判断を保証するものではありません。
