コラム
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2026.04.08

賃上げ促進税制の見直し(令和8年度改正)

はじめに

令和8年度がスタートしました。 新年度は給与体系の見直しや昇給を検討するタイミングでもあります。

「従業員の処遇を改善したい、でも人件費の増加が会社の収益に響かないか心配」――そんな経営者・事業主の方にぜひ知っておいていただきたいのが賃上げ促進税制です。 給与を上げながら税負担も抑えられるこの制度、令和8年度改正で一部見直しがありました。 新年度の給与計画を立てる前に、改正内容をしっかり確認しておきましょう。

本制度は大企業・中堅企業・中小企業それぞれに向けた区分がありますが、 本コラムでは中小企業向けの制度に絞って解説します。

中小企業向けの対象となるのは、青色申告書を提出している以下の方です。
・中小企業者等(資本金1億円以下の法人、農業協同組合等)
・従業員数1,000人以下の個人事業主

制度の基本的な仕組み

適用要件と控除率

全従業員への給与等支給額が前年度より増加した場合、増加額の一定割合を税額から控除できます。 控除率は増加割合によって以下のとおりです。

増加割合 税額控除率
前年度比 1.5%以上 15%
前年度比 2.5%以上 30%

控除上限は以下のように定められています。
・法人の場合:当期の法人税額の20%
・個人事業主の場合:調整前事業所得税額※の20%

※個人事業主の場合、控除上限の計算に使う「調整前事業所得税額」は所得税額全体ではなく、総所得金額に係る所得税額に事業所得の割合を乗じた金額となります。給与所得や不動産所得など複数の所得がある場合はご注意ください。

計算式

【増加割合の計算】
(当期の給与等支給額 - 前期の給与等支給額)÷ 前期の給与等支給額 × 100
この割合が1.5%以上かどうかで適用可否を判定します。

【税額控除額の計算】
(当期の給与等支給額 - 前期の給与等支給額)× 控除率(15%または30%)

令和8年度改正の変更点

令和8年度の税制改正全体については、令和8年税制改正大綱(資産税・法人税編)もあわせてご覧ください。

教育訓練費の上乗せ措置が廃止

改正前は、以下の2つの要件をともに満たす場合に控除率を10%上乗せできました。
・教育訓練費が前年度比5%以上増加していること
・教育訓練費が当期の給与等支給額の0.05%以上であること

この措置は、税額控除額が教育訓練費の増加額を上回るケースがあるという会計検査院の指摘を受け、 令和8年3月31日をもって廃止されました。適用できる最終時期は以下のとおりです。
・法人:令和8年3月31日以前に開始する事業年度まで(3月決算法人であれば令和8年3月期が最後)
・個人事業主:令和8年分(令和8年1月1日〜12月31日)まで

改正前後の比較と影響額

項目 改正前 改正後
基本(1.5%以上) 15% 15%
上乗せ(2.5%以上) +15% +15%
上乗せ(教育訓練費) +10% 廃止
上乗せ(認定取得) +5% +5%
最大控除率 45% 35%

前期給与等支給額5,000万円 → 当期5,150万円(3%増)の場合の影響額を試算すると以下のとおりです。

項目 改正前(教育訓練費上乗せあり) 改正後
給与等支給増加額 150万円 150万円
控除率 40%(30%+10%) 30%
税額控除額 60万円 45万円
差額 ▲15万円

教育訓練費の上乗せが活用できなくなることで、同じ賃上げでも年間15万円の控除が減少します。 給与規模が大きいほど影響額はさらに大きくなります。

赤字でも使える「繰越税額控除制度」

控除しきれなかった金額は翌年度以降5年間繰り越して控除でき、赤字の年度でも賃上げの恩恵を受けられる点が大きな特徴です。

ただし、繰越控除を受けるには以下の2つの条件を満たす必要があります。
・超過額が発生した事業年度から毎年、確定申告書に明細書を添付し続けること
・繰越控除をする事業年度に給与等支給額が前年度を超えていること

1年でも添付を失念すると繰越控除が受けられなくなるため、申告時に必ず確認するようにしましょう。

おわりに

令和8年度改正で最大控除率は45%から35%に引き下げられました。 実質的な改悪ではありますが、給与増加額の最大35%が税額から直接差し引かれる制度は依然として非常に有効な節税手段です。

新年度は給与体系の見直しを検討するタイミングでもあります。自社の給与等支給額が要件を満たすかどうか、今一度確認しておくことをお勧めします。

また、赤字の年度でも繰越税額控除制度を活用することで恩恵を受けられる点も、あわせて押さえておきましょう。

制度の詳細については国税庁タックスアンサー No.5927-2もご参照ください。

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