コラム
column
2025.12.25

令和8年税制改正大綱(所得税・消費税編)

はじめに

令和8年度(2026年度)税制改正大綱が、2025年12月19日に公表されました。

今回の改正は、物価高騰への対応と、いわゆる「年収の壁」の解消に向けた内容が含まれています。

税理士事務所の視点から、経営者や個人の皆様が押さえておくべき改正のポイントを詳細に解説します。

令和8年度税制改正大綱の全体像

今回の税制改正の最大の柱は、所得税の「課税最低限の大幅な引き上げ」です。

背景には、長引く物価上昇により、実質的な手取り額が減少している国民の不満と、人手不足を背景とした労働時間の抑制があります。

1. 個人所得課税:103万円の壁が「178万円」へ

もっとも注目すべきは、所得税がかかり始める年収ライン(課税最低限)の引き上げです。

改正の概要

令和7年度改正で103万円から160万円へと引き上げられたばかりですが、令和8年度からはさらに「178万円」へと拡大される方針が示されました。

具体策

基礎控除および給与所得控除の最低保障額をそれぞれ引き上げます。

また、物価連動による調整に加え、令和8年・9年の2年間にわたる時限的な加算措置が講じられます。

2. 賃上げ促進税制

賃上げ促進税制については大企業は令和8年3月31日で現行の措置は廃止されます。

中小企業においては令和8年4月1日からは要件を一部強化しつつ維持されます。(教育訓練費の上乗せ措置は廃止されます)

3.防衛特別所得税の導入

防衛力の強化に係る財源確保のために令和9年以降所得税に新たな付加税として防衛特別所得税(所得税額の1%相当)が導入されます。

この防衛特別所得税の導入に際し、令和9年から現行の復興特別所得税の税率が1%引き下げられます。

4. 青色申告特別控除:デジタル化推進による「格差」の拡大

個人事業主の節税の柱である「青色申告特別控除」は、今回の改正で「デジタル対応する人には手厚く、しない人には厳しく」というメッセージが明確になりました。

「75万円控除」の新設と「55万円控除」の廃止

現行の65万円控除、55万円控除の体系が再編されます。

最大75万円控除(拡充):現行の65万円控除の要件(複式簿記+e-Tax)に加え、一定の要件を満たす「優良な電子帳簿」を使用している場合、控除額が75万円に引き上げられます。

65万円控除(維持):「優良」ではない通常の会計ソフト等での記帳とe-Tax申告の場合は、現行通り65万円が適用されます。

55万円控除(廃止・実質増税): 紙での申告(書面提出)を行っている場合、これまでは55万円の控除が受けられましたが、今回の改正で「紙申告は原則10万円控除」へと大幅に引き下げられる方針です。

簡易簿記(10万円控除)への制限

簡易な記帳(10万円控除)についても、前々年の所得金額が一定(1,000万円)を超える場合は控除額が0円とされるなど、高所得者に対する帳簿の厳格化が進みます。

5. 消費税:インボイス制度「2割特例」の終了と「3割特例」の創設

インボイス制度導入に伴い、免税事業者から課税事業者になった小規模事業者を支えてきた「2割特例(売上税額の20%を納付すればよい制度)」が、大きな転換期を迎えます。

2割特例から「3割特例」への移行

現行の2割特例は、令和8年9月30日を含む課税期間をもって終了します。

しかし、急激な負担増を避けるため、個人事業主に限り、令和9年および令和10年の各課税期間において、売上税額の3割を納付する「3割特例」が新たに創設されました。

6.免税事業者からの仕入れに関する経過措置の縮減

インボイス未登録(免税事業者)からの仕入れについて、一定割合を控除できる経過措置も段階的に縮小されます。

2026年(令和8年)10月〜: 控除割合が現行の80%から70%へ(※当初案より緩和)

2028年(令和10年)10月〜: 50%へ

2030年(令和12年)10月〜: 30%へ

最終的には令和13年9月末をもって、免税事業者からの仕入れに係る税額控除は完全に廃止されることが確定しました。

まとめ

正式な税制改正案は令和8年3月末頃に国会で承認され施行されることとなりますが、内容は大綱から大きく変わることはありません。

年明けまた改正に動きがあればお知らせします。

改正の内容を適切に把握し、今後の企業経営に活かしていただければと思います。

 

 

 

 

 

 

 

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