コラム
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2025.12.05

償却資産税について

はじめに

事業を営む上で、土地や建物の固定資産税については多くの方が認識されていますが、「償却資産税」についてはあまり馴染みがないという方も少なくありません。

償却資産税は、事業用の機械や備品などに課される税金で、適切な申告を行わないと、後に追徴課税を受けるリスクもあります。

本コラムでは、償却資産税の基本的な仕組みから申告の実務、よくある誤解まで、税理士の視点から詳しく解説いたします。

 償却資産税とは

 償却資産税の概要

償却資産税は、正式には固定資産税の一種で、会社や個人事業主が事業のために使用している償却資産に対して課される地方税です。

土地や建物以外の事業用資産が課税対象となり、毎年1月1日時点で所有している償却資産について、その所在地の市町村(東京23区内は都)に申告し、納税する必要があります。

 償却資産の対象となる資産

償却資産税の対象となるのは、以下のような事業用の有形固定資産です。

構築物

駐車場舗装、門扉、塀、広告塔、屋外照明設備、受変電設備など

機械及び装置

製造設備、印刷機械、工作機械、太陽光発電設備など

船舶・航空機

漁船、ボート、飛行機、ヘリコプターなど

車両及び運搬具

大型特殊自動車(フォークリフト、ショベルローダなど)

※普通自動車は自動車税の対象のため、償却資産税の対象外です

工具、器具及び備品

パソコン、コピー機、応接セット、エアコン、看板、厨房機器、医療機器、美容機器など

課税対象とならない資産

以下の資産は償却資産税の課税対象外となります。

– 土地、建物(家屋)

– 自動車税・軽自動車税の課税対象となる車両

– 無形固定資産(ソフトウェア、特許権など)

– 繰延資産

– 取得価額が10万円未満で、法人税法等で一時に損金算入した資産

– 取得価額が20万円未満で、3年間で一括償却した資産

ただし、取得価額が30万円未満で「少額減価償却資産の特例」を適用した資産は、償却資産税の課税対象となる点に注意が必要です。

 申告の実務

 申告時期と方法

償却資産の所有者は、毎年1月1日現在の所有状況を、1月31日までに資産が所在する市町村に申告する必要があります。

申告書には以下の内容を記載します。

– 種類別明細書(資産の種類ごとの取得年月、取得価額、耐用年数など)

– 増加資産・減少資産の内訳

近年では、多くの自治体で電子申告(eLTAX)にも対応しており、効率的な申告が可能になっています。

 評価額の算定方法

償却資産の評価額は、取得価額を基礎として、取得後の経過年数に応じた減価を考慮して算定されます。

評価額の計算式

前年中に取得した資産:取得価額 × (1 – 減価率 × 1/2)

前年前に取得した資産:前年度評価額 × (1 – 減価率)

ただし、評価額の最低限度は取得価額の5%とされており、5%まで減価した後はその金額が据え置かれます。

評価額と決算書上の帳簿価額とは完全には一致しませんのでご注意下さい。

 免税点

償却資産の課税標準額の合計が150万円未満の場合は、償却資産税は課税されません。

ただし、この場合でも申告義務は免除されないため、申告自体は必要となります。

 よくある誤解と注意点

 誤解その1:申告しなくても分からない?

償却資産税の申告は自己申告制ですが、市町村は税務署から法人税や所得税の申告データの提供を受けることができます。

また、実地調査を行う権限もあるため、申告漏れは後に発覚するリスクがあります。

無申告や過少申告が判明した場合、過去5年分まで遡って課税される可能性があります。

誤解その2:少額資産はすべて対象外?

取得価額10万円未満で一時損金算入した資産や、20万円未満で一括償却した資産は対象外ですが、30万円未満で少額減価償却資産の特例を適用した資産は課税対象となります。

会計処理と償却資産税の取扱いは必ずしも一致しないため、注意が必要です。

 誤解その3:建物の設備はすべて家屋として評価される?

建物に附属する設備のうち、家屋として評価されるものと償却資産として評価されるものがあります。

例えば、テナントが独自に施工した内装や造作、受変電設備、太陽光発電設備などは償却資産として申告が必要です。

 業種別の注意点

 製造業

製造設備、金型、工具などが多岐にわたるため、固定資産台帳との照合が重要です。

特に金型は数が多く、管理が煩雑になりがちなため、台帳の整備が不可欠です。

 飲食業

厨房機器、冷蔵庫、カラオケ機器、看板などが対象となります。

居抜き物件を取得した場合、前所有者の資産と区別して管理する必要があります。

 医療・介護事業

医療機器、診察台、電子カルテシステムなど高額な資産が多いため、償却資産税の負担も大きくなる傾向があります。

リース資産の取扱いにも注意が必要です。

 リース資産の取扱い

 所有権移転リース

リース期間終了後に所有権が借主に移転するリースの場合、借主が償却資産として申告する必要があります。

 所有権移転外リース

平成20年4月1日以後に契約した所有権移転外リースについては、原則として貸主(リース会社)が申告します。

ただし、借主が取得したものとして会計処理している場合は、借主が申告することもあります。

申告漏れを防ぐためのポイント

 固定資産台帳の整備

会計上の固定資産台帳を償却資産税の申告にも活用できるよう、以下の情報を整備しておくことが重要です。

– 資産の名称、種類

– 取得年月日

– 取得価額

– 耐用年数

– 設置場所

 定期的な実地確認

台帳と実際の資産を照合し、除却済みの資産が台帳に残っていないか、新規取得資産が漏れていないかを確認します。

 税理士との連携

償却資産税は地方税であり、税理士が法人税の申告業務の中で必ずしもカバーしているとは限りません。

顧問税理士と償却資産税の申告についても連携することをお勧めします。

 まとめ

償却資産税は、事業を営む上で避けては通れない税金です。

適切な申告を行うためには、日頃から固定資産の取得・除却を正確に記録し、台帳を整備しておくことが重要です。

また、会計上の減価償却と償却資産税の評価は異なる点も多いため、専門家のアドバイスを受けながら対応することをお勧めします。

申告漏れや誤った申告は、後に追徴課税や加算税が課されるリスクがあります。

不明な点がある場合は、早めに税理士などに相談し、適正な申告を心がけましょう。

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