コラム
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2025.10.02

令和7年度の地域別最低賃金が発表されました

はじめに

令和7年度の最低賃金が9月5日までにすべての都道府県で出揃いました。

今回実施される最低賃金の改訂は、多くの企業にとって重要な経営課題となります。

本コラムは、この改訂が企業の労務管理や財務に与える影響について解説いたします。

最低賃金制度の概要

 最低賃金制度とは

最低賃金制度は、労働者の生活の安定と労働力の質的向上を図ることを目的として、国が法的に定める賃金の最低額です。

この制度は「最低賃金法」に基づいて運用されており、使用者は最低賃金額以上の賃金を労働者に支払う義務があります。

令和7年度改訂の社会的背景

近年の物価上昇、人手不足の深刻化、そして働き方改革の推進により、最低賃金の引き上げが継続的に行われています。

令和7年度の改訂についても、これらの社会情勢を踏まえた見直しとなりました。

政府は「成長と分配の好循環」の実現を目指しており、労働者の所得向上を通じた消費拡大と経済成長の促進を図っています。

このような政策方針のもと、最低賃金の段階的な引き上げが継続される見込みです。

 最低賃金改訂のメカニズム

 地域別最低賃金の設定

日本の最低賃金は都道府県ごとに設定される「地域別最低賃金」が基本となります。

各都道府県の経済状況、物価水準、労働市場の動向などを考慮して、地方最低賃金審議会が具体的な金額を決定します。

今回の改訂において初めてすべての都道府県で時給1,000円を超えることになりました。

 企業への影響と対応策

人件費への直接的影響

最低賃金の引き上げは、企業の人件費に直接的な影響を与えます。

特に以下の企業には大きな影響が予想されます

– 最低賃金またはそれに近い水準で多数の労働者を雇用している企業

– パートタイム・アルバイト労働者の比率が高い企業

– 労働集約型の業種(小売業、飲食業、介護業など)

 間接的な影響

最低賃金の改訂は、直接的な人件費増加だけでなく、以下のような間接的な影響も生じます

賃金体系の見直し

最低賃金の引き上げにより、既存の賃金体系において最低賃金との差が縮小する場合があります。

これにより、全体的な賃金水準の見直しが必要となる可能性があります。

社会保険料の増加

賃金の増加に伴い、社会保険料(健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など)の企業負担分も増加します。

労働時間管理の重要性

時間外労働に対する割増賃金の基準額も上昇するため、より厳格な労働時間管理が求められます。

 労務管理上の注意点

 適用範囲の確認

最低賃金の適用範囲について、以下の点を確認する必要があります

– 正社員、契約社員、パート・アルバイトを問わず、すべての労働者が対象

– 試用期間中の労働者も原則として対象

– 特定の障害者については特例制度あり

 賃金計算の方法

最低賃金との比較において、以下の手当等は賃金から除外して計算します

– 精皆勤手当、通勤手当、家族手当

– 臨時に支払われる賃金(賞与など)

 罰則規定

最低賃金法に違反した場合、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

また、労働基準監督署による調査・指導の対象となり、企業の社会的信用にも影響を与える恐れがあります。

 助成金・支援制度の活用

 業務改善助成金

厚生労働省では、最低賃金引き上げの影響を受ける中小企業を支援するため「業務改善助成金」を実施しています。

この助成金は、生産性向上のための設備投資などを行い、労働者の賃金引き上げを行う企業に対して支給されます。

キャリアアップ助成金

有期雇用労働者の正社員転換や処遇改善を行う企業に対する「キャリアアップ助成金」も活用可能です。

最低賃金引き上げを機に、労働者のキャリアアップを図ることで助成金を受給できる可能性があります。

 今後の展望と企業の対応方針

 中長期的な最低賃金の動向

政府は「2020年代でには地域別最低賃金を全国平均1500円以上に引き上げる」という方針を掲げており、今後も段階的な引き上げが継続される見込みです。

企業は単年度の対応だけでなく、中長期的な視点での対応策を検討する必要があります。

 まとめ

令和7年度の最低賃金改訂は、多くの企業にとって重要な経営課題となります。

単純な人件費増加への対応だけでなく、この機会を活用して労働生産性の向上や賃金制度の見直しを行うことで、持続的な成長につなげることが可能です。

参考 令和7年度地域別最低賃金 全国一覧(厚生労働省HPより)

 

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