コラム
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2025.08.14

【税務調査指摘多発!】給与と外注費の違い

はじめに

事業を経営していく上で、人件費は大きな支出項目の一つです。

特に「従業員への給料」と「外部業者への外注費」は、どちらも事業活動に不可欠な支出ですが、税務上の取り扱いが大きく異なります。

本稿では、外注費と給料の違い、税務上の留意点、そして適切な管理方法について解説します。

外注費と給料の基本的な違い

定義と性質

外注費とは、自社で行うべき業務の一部または全部を外部の事業者に委託する際に支払う費用です。

一方、給料は雇用契約に基づいて従業員に支払う労働の対価です。

この二つの最も本質的な違いは「指揮命令関係」の有無にあります。

給料を支払う従業員に対しては使用者として指揮命令権を持ちますが、外注先に対しては業務の結果に対してのみ対価を支払い、作業方法などを直接指示することは通常行いません。

法的な位置づけ

– 給料:労働基準法、労働契約法などの労働法規の適用を受けます

– 外注費:民法上の請負契約や業務委託契約として扱われます

税務上の取り扱いの違い

源泉徴収の要否

給料は源泉徴収の対象となり、支払者は所得税を天引きして納付する義務があります。

一方、外注費は原則として源泉徴収の対象とはなりませんが、いくつかの例外があります。

 

– 外注先が個人の場合で、特定の報酬(原稿料、講演料など)については源泉徴収が必要

– 外注先が法人の場合は原則として源泉徴収不要

社会保険・労働保険の取り扱い

健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険

について、雇用者は労働時間等によって加入義務がありますが、外注の場合は加入義務がありません。

給料の場合、これらの社会保険料の事業主負担分が別途発生するため、実質的なコストは支払給与額より高くなります。

経費計上のタイミング

給料は実際に支払った時点で経費計上します。

未払計上する場合でも、翌月払いの当月分給与など、確定した債務について計上が可能です。

外注費は、成果物の納品や役務の提供が完了した時点で経費計上するのが原則です。

ただし、長期にわたるプロジェクトの場合は進行基準による計上も認められることがあります。

外注費と給与の区分

国税庁「個人事業者の納税義務(個人事業者と給与所得者の区分)」によると、

以下の4つの基準を総合的に勘案して外注費か給与かを判定すべきとしています。

・その契約に係る役務の提供の内容が他人の代替を容れるかどうか

・役務の提供に当たり事業者の指揮監督を受けるかどうか

・まだ引き渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失した場合等においても当該個人が権利として既に提供した役務に係る報酬の請求をなすことができるかどうか

・役務の提供に係る材料又は用具等を供与されているかどうか

偽装請負のリスク

形式上は業務委託契約としながら、実質的には雇用関係と同様の働き方をさせる「偽装請負」は法律違反となります。
以下のような場合、税務調査で指摘されるリスクが高まります

– 特定の個人に長期間、継続的に外注している
– 業務の進め方や時間を細かく指示している
– 同じ内容の業務を従業員と外注先の両方が行っている
– 報酬額が時間給的な計算方法となっている

税務調査での着眼点

税務調査において、外注費と給与の区分は重要な着眼点となっています。
以下のような場合、給与として再認定されるリスクがあります

– 成果物が明確でない
– 請求書に業務内容の詳細な記載がない
– 外注先が複数の取引先を持たず、特定の会社にのみ依存している
– 業務場所が自社内で、自社の設備・備品を使用している

適切な管理のためのポイント

外注契約書の整備

外注契約を結ぶ際は、以下の点を明確にした契約書を作成しましょう

– 委託する業務の具体的内容と納期
– 成果物の仕様や品質基準
– 報酬額と支払条件
– 知的財産権の帰属
– 秘密保持義務
– 契約期間と更新条件

請求書の管理

外注費の支払いに際しては、適切な請求書を受領し保管することが重要です。
請求書には以下の項目が記載されているべきです。

– 委託業務の具体的内容
– 成果物や納品物の明細
– 金額の算定根拠
– 支払条件

業務実態の適切な区分

外注と雇用の区分を明確にするためには、業務の実態面でも以下のような点に注意が必要です。

– 外注先には業務の結果に対してのみ報酬を支払い、作業方法や時間は指定しない
– 外注先には自社の従業員と同様の福利厚生を提供しない
– 外注先の業務場所は原則として自社外とする
– 外注先には固定報酬ではなく、成果に応じた報酬体系とする

外注活用のメリットとデメリット

メリット

– 繁忙期や特定プロジェクト時のみ柔軟に人材を確保できる
– 専門性の高い業務を外部のプロに任せることで品質向上が期待できる
– 社会保険料などの付随コストがかからない
– 雇用に関する各種手続きや労務管理の負担が軽減される

デメリット

– 自社のノウハウが蓄積されにくい
– 機密情報漏洩のリスクがある
– 長期的には雇用より高コストになる可能性がある
– 品質管理が難しくなる場合がある

まとめ

外注費と給料は、事業運営において重要な支出項目ですが、その法的性質や税務上の取り扱いは大きく異なります。
適切な区分と管理を行うことで、税務リスクを回避するとともに、事業の効率的な運営が可能になります。

外注と雇用のどちらを選択するかは、業務の性質、期間、必要とする専門性などを総合的に判断して決定することが重要です。
また、一度決めた契約形態であっても、業務内容や関係性の変化に応じて見直しを行うことも必要です。

適切な区分と管理のもとで外注と雇用をバランスよく活用することが、健全な経営のための鍵となるでしょう。

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