令和6年12月20日に令和7年度税制改正大綱が閣議決定されました。
この大綱は、今後の税制の方向性を示す重要な指針であり、個人や企業に大きな影響を与える可能性があります。
そこで、今回は、令和7年度税制改正大綱の主要な改正点について解説します。
1. 改正の背景と主要項目
今回の税制改正は、「将来に夢や希望と安心を持てる、公正で活力ある社会を目指すための税制」を構築することを基本としています。
具体的には、以下の主要項目が掲げられています。
・持続的な経済成長を目指し、活力ある社会を構築するための環境整備を図ること
・若者や現役世代を含め誰もが豊かさを実感できる、質の高い国民生活を実現すること
・わが国を取り巻く厳しい国際環境や国際的要請を踏まえ、いわゆる安全保障及び経済安全保障の強化や地球温暖化対策等に取り組むこと
これらの項目を踏まえ、個人所得課税、法人課税、資産課税など、幅広い分野で改正が行われます。
2. 個人所得課税の主な改正点
個人所得課税においては、物価上昇や働き方の変化に対応するための見直しが行われます。
・基礎控除の引き上げ: 基礎控除額が48万円から58万円に引き上げられます。
合計所得が2,350万円を超える場合は段階的に控除額が減少します。
これは、多くの納税者に影響する改正であり、所得税の負担軽減につながります。
・給与所得控除の最低保障額の引き上げ: 給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられます。
これにより、給与所得者の税負担が軽減されます。ただし、給料収入金額が162万5千円を超える方は以前と同じ計算式で計算した金額が給与所得控除額となります。
・特定親族特別控除の新設: 大学生等の子(19歳以上23歳未満)に係る新たな控除として、「特定親族特別控除(仮称)」が新設されます。
具体的には19歳以上23歳未満の親族等で、合計所得金額が58万円を超えるものについても、合計所得金額が123万円以下である場合、最大で63万円の控除を受けられます。
対象親族等の所得に応じて段階的に控除額が減少します。
・配偶者控除及び扶養控除の対象者の合計所得金額の変更:上記に伴い配偶者控除及び扶養控除の対象者の合計所得金額要件が58万円以下に引き上げられます。
また、ひとり親控除や勤労学生控除などについても同様の措置が講じられます。
これらの改正は、令和7年分以後の所得税から適用される予定です。
・生命保険料控除の変更:新生命保険料に係る一般生命保険料控除について23歳未満の扶養親族を有する場合には、控除額が最大6万円に引き上げられます。(現行最大4万円)
ただし一般生命保険料控除、介護医療保険料控除及び個人年金保険料控除の合計適用限度額は現行と同じ12万円のままです。
こちらは令和8年分の所得税より適用されます。
3. 法人課税の主な改正点
法人課税においては、中小企業への配慮や防衛力強化のための措置が講じられます。
・中小企業者等の法人税の軽減税率の特例の延長: 中小企業者等の法人税の軽減税率の特例が次の見直しを行った上で、2年間延長されます。
中小企業者等の所得の金額のうち、年800万円以下の部分に適用される法人税の軽減税率15%の適用時期が令和9年3月31日までに開始する事業年度まで延長されます。
ただし、所得の金額が年10億円を超える事業年度については、所得の金額のうち年800万円以下の部分に適用される税率が現行の15%から17%に引き上げられます。
これは、依然として経済の先行きが不透明な状況を踏まえ、中小企業の経営を支援するものです。
・防衛特別法人税(仮称)の創設: 防衛力強化のための財源確保を目的として、「防衛特別法人税(仮称)」が創設されます。
法人の各事業年度の基準法人税額について下記の算式により計算した防衛特別法人税が課税されます。
(基準法人税額※1-基礎控除年500万円※2)×4%
※1 所得税額控除、外国税額控除等を適用しないで計算した法人税の額とする
※2 基礎控除に追加して所得税額控除、外国税額控除等の税額控除を行う
令和8年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。
・中小企業経営強化税制の延長:中小企業経営強化税制について一定の措置が講じられた上で、令和9年3月末まで2年間延長されます(所得税についても同様です)
4.まとめ
今回の税制改正は、個人や企業の税負担に大きな影響を与える可能性があります。
特に、個人所得課税においては、基礎控除や給与所得控除の引き上げにより、多くの方が税負担の軽減を実感できるでしょう。
また、法人課税においては、中小企業への配慮が継続される一方、新たな税制措置も導入されるため、企業経営者は今後の動向に注意が必要です。
今回の改正を正しく理解し、適切な対応をとることで、個人や企業は税制のメリットを最大限に活用しましょう。