9月頃から保険会社からの控除証明書などが届きはじめ、年末調整に必要な書類が揃いつつある時期かと思います。
そこで今回は2024年の年末調整で注意すべき事項について解説したいと思います。
自社で年末調整をされる方は書類の様式なども少し変更されていますので、もう一度ご確認下さい。
はじめに
令和6年の年末調整は、令和5年と比較すると、以下の2点の変更点があります。
1.定額減税の導入
2.申告書類の変更・簡略化
定額減税の導入
定額減税は、令和6年4月の税制改正により導入された新しい制度です。
所得税額から1人あたり3万円+住民税所得割額から1万円の計4万円が減税されます。
令和6年年末調整における注意点
1. 定額減税の対象者と計算方法
対象者: 原則として、全ての給与所得者が対象となります。(合計所得金額が1805万円以下(給与のみの方だと年収2000万円以下)の方が対象となります)
計算方法:年末調整の際に、従業員から提出された扶養控除等申告書などをもとに、同一生計配偶者や扶養親族(合計所得金額が48万円以下(給与のみの方だと年収103万円以下)の方)の人数を確定し、定額減税額を計算します。
2. 月次減税との関係
・月次減税: 令和6年6月1日以降に支払われる給与に対しては、月次減税が適用されています。
・年調減税との調整: 年末調整の際には、月次減税額と年調減税額を調整し、過不足が生じた場合は還付または追徴が行われます。
3. 非居住者の扱い
・非居住者: 同一生計配偶者や扶養親族が非居住者の場合は、定額減税の対象外となります。 (条件を満たせば、所得税の控除対象扶養親族には該当します)
※年末調整の対象となる本人が令和6年の途中で海外に出国して非居住者になった場合は、非居住者となる日前の所得について定額減税の適用があります。
申告書類の変更・簡略化
年末調整事務において従業員からの提出が必要な書類は以下4点となります。
1.扶養控除等申告書
2.基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書
3.保険料控除申告書
4.住宅借入金等特別控除申告書(該当者のみ)
※中途入社の方は必要に応じて源泉徴収票の提出も必要です。
令和6年年末調整における注意点
1.扶養控除等申告書の記載事項の再確認
通常令和6年の扶養控除等申告書は令和6年1月の給与支給日までに従業員からの提出を受けることとされています。
そのため提出時点と12月31日で扶養の状況に変更がある場合があります。
このような場合には年末調整時に令和6年分の扶養控除申告書を従業員に返却し訂正していただき、その内容を元に年末調整をしていくことになります。
中には、令和7年分の扶養控除等申告書の内容を元に令和6年の年末調整を行っている場合もあるかと思いますが、正確には令和6年分の扶養控除申告書の内容で年末調整をすることになっていますので、令和6年の扶養控除申告書を渡してご本人に訂正していただくようにしましょう。
今年は定額減税の適用があるため、同一生計配偶者や扶養親族などの所得の記載欄も慎重に確認しましょう。
2.基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書に定額減税に係る記載欄が追加されました
令和6年年末調整においては定額減税が適用されるため今年のみ定額減税に係る記載欄が追加されています。
※国税庁HPより抜粋
3.保険料控除申告書が簡略化されました。
保険料控除申告書の記載において以下の3点が削除され簡略化されています。
・生命保険料控除;保険金等受取人欄のうちの「あなたとの続柄」
・地震保険料控除:保険等の対象となった家屋等に居住又は家財を利用している者等の氏名に係る「あなたとの続柄」欄
・社会保険料控除:保険料を負担することになっている人欄のうちの「あなたとの続柄」欄
まとめ
定額減税は所得税法上の控除対象配偶者や控除対象扶養親族の定義と異なる部分があります。
そのためいつも以上に年末調整事務に手間がかかることが予想されます。
年末調整を12月の給与に反映している会社は特に、早めに従業員から必要書類の提出を受けるなど準備をすすめ、スムーズに完了するようにしましょう。