今年も残すところ2カ月余りとなりました。
そろそろ今年の損益予想も固まりつつあるかと思います。
そこで今回は基本的な節税対策として活用される小規模企業共済についてお話したいと思います。
小規模企業共済とは
小規模企業共済は、個人事業主や中小企業経営者などが、将来の退職金や事業資金として積み立てを行い、その掛金を全額所得控除できる制度です。
中小企業基盤整備機構が運営しており、国が後押ししている制度であるため、安全性も高いと言えます。
小規模企業共済のメリット
小規模企業共済には、以下のメリットがあります。
節税効果: 掛金全額が所得控除の対象となるため、納める所得税額を減らすことができます。
老後の生活資金や事業資金の準備: 長期的に積み立てることで、退職金や事業資金の準備ができます。
税制優遇: 共済金を受け取る際にも、税制上の優遇措置が受けられます。
掛金の柔軟性: 月額1,000円から加入でき、掛金は自由に増減できます。
安全性: 中小企業基盤整備機構が運営しているため、安全性が高いです。
小規模企業共済のデメリット
一方で、小規模企業共済には、以下のデメリットも存在します。
加入期間が短い場合の解約: 加入期間が12か月未満で任意解約した場合、掛け捨てとなります。
元本割れのリスク: 加入期間が20年未満で解約した場合、元本割れとなる可能性があります。
所得が低い場合の節税効果: 所得が低い場合は、所得控除の恩恵が少なくなります。
共済金受け取り時の課税: 共済金を受け取る際には、退職所得や雑所得として課税されます。
具体的な活用法
小規模企業共済は、以下のようなケースで有効に活用できます。
老後の生活資金の準備: 定年退職後や事業を引退した後の生活資金として積み立てる。
事業資金の準備: 事業の拡大や設備投資などの資金として積み立てる。
節税対策: 所得が高い個人事業主や中小企業経営者が、所得税の負担を軽減したい場合に活用する。
小規模企業共済の注意点
加入資格: 個人事業主や中小企業経営者などが加入対象となります。(業種によって常時使用する従業員の数の制限が異なりますが、クリニックですと、常時使用する従業員が5人以下であれば加入できます。医療法人の役員は加入できません)
掛金額: 月額1,000円から加入できますが、上限金額(70,000円)があります。
解約: 解約する場合は、一定の手続きが必要となります。
他の制度との比較
小規模企業共済と似た制度としてiDeCoがあります。
この二つを比較すると以下の通りとなります。
項目 | 小規模企業共済 | iDeCo |
対象者 | 個人事業主、中小企業の役員・従業員 | 個人事業主、会社員、公務員 |
掛金と 所得控除 |
掛金全額が所得控除 (月額1,000円から500円単位で設定) |
掛金全額が所得控除 (月額5,000円から1,000円単位で設定) |
運用 |
中小企業基盤整備機構が運用 |
自分で金融商品を選択 |
中途解約 |
可能(解約返戻金が掛金より少ない場合あり) |
原則不可(60歳まで解約不可) |
受取時の 課税 |
一括受け取り:退職所得 分割受け取り;雑所得 ※契約者の年齢により異なる場合があります。 |
一時金としてして受け取る場合:退職所得 年金として受け取る場合:雑所得 |
その他 |
貸付制度あり |
老後の年金収入を補う 口座開設手数料等手数料がかかる |
これらは併用することも可能です。
個人事業主の場合、小規模企業共済は月額70,000円、iDeCoは月額68,000円が上限(ただし国民年金基金に加入されている方は上限額が異なります)
なので、最大年間165万6000円積み立てることが可能です。
これらは全て所得控除となるので、かなり高い節税効果が期待できます。
ただし、iDeCoは60歳になるまで引き出せないため無理のない金額で設定するのをおすすめします。
小規模企業の経営者や役員、個人事業主の方がどちらか1つを選択するなら貸付制度の利用が可能な小規模企業共済を優先した方がよいでしょう。
小規模企業共済に加入する前に
小規模企業共済に加入する前に、以下の点をよく検討しましょう。
加入目的: 何のために加入するのか、明確な目的を設定しましょう。
加入期間: どのくらいの期間継続できるのか、無理のない範囲で計画を立てましょう。
掛金額: 毎月の負担額をシミュレーションし、無理のない金額を設定しましょう。
まとめ
小規模企業共済は、個人事業主や中小企業経営者にとって、老後の生活資金の準備や節税対策として有効な制度です。
しかし、メリットだけでなくデメリットも存在するため、加入する前にしっかりと情報を収集し、慎重に検討することが重要です。