コラム
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2024.10.16

個人のクリニックの事業承継時の注意点

クリニックを長年経営してきた院長が引退を考える際、事業承継が重要な課題となります。

特に個人クリニックの場合、事業承継の方法には大きく分けて2つの選択肢があります。

一つは、家族や従業員などの後継者に承継する方法。

もう一つは、第三者にクリニックを売却するM&Aの方法です。

それぞれの承継方法には異なるリスクとメリットが存在し、慎重な準備と計画が必要です。

本コラムでは、後継者に承継する場合とM&Aで承継する場合、それぞれの注意点について解説します。

後継者に承継する場合の注意点

後継者の選定と育成

クリニックの後継者として適任な人物を見つけることが、最初の大きなハードルです。
多くの場合、院長の子供が後継者候補となりますが、必ずしも医師免許を持っているとは限りません。
仮に資格を持っていたとしても、クリニックの経営に関する知識や技術が不足している場合、育成が必要になります。

後継者育成は、長期的な視点で計画的に行うことが重要です。
具体的には、経営の基本や財務の理解、患者とのコミュニケーション能力の向上などが求められます。
後継者が急に院長業務を引き継ぐと、患者や従業員からの信頼を得るまでに時間がかかる場合がありますので、引継ぎ期間を設け、徐々に業務に慣れさせることが推奨されます。

経営権と資産の引継ぎ

後継者承継の際、クリニックの経営権と資産をどのように引き継ぐかも重要なポイントです。
クリニックの運営に必要な設備や資産、また場合によっては土地や建物が関与します。
これらの資産は、適切な評価を行った上で後継者に引き渡す必要があります。

また、後継者に対して無償で経営権を譲渡する場合でも、税務上の問題が生じることがあります。
例えば、贈与税や相続税の負担が発生する可能性があるため、税理士や弁護士の専門家に相談し、適切な税務対策を講じることが大切です。
贈与税の控除や非課税枠をうまく利用することで、負担を軽減できる場合があります。

従業員や患者とのコミュニケーション

クリニックは医療機関であり、患者との信頼関係が非常に重要です。
そのため、承継によって経営者が変わることに対する患者の不安を解消する必要があります。
新しい院長がしっかりと患者に挨拶し、治療方針やクリニックの基本方針に変化がないことを伝えることが、スムーズな承継に繋がります。

また、従業員もクリニックの安定運営に欠かせない存在です。
後継者への引き継ぎ期間中に、従業員との信頼関係を構築することが重要です。
後継者が従業員の業務を理解し、適切な指導を行えるように準備することが求められます。

 

M&Aで承継する場合の注意点

適切な買い手の選定

M&Aによる承継では、クリニックを購入する側の適正が非常に重要です。
適切な買い手を見つけるためには、専門のM&A仲介業者を活用することが効果的です。
医療機関に特化したM&A仲介業者は、医療業界の特殊性を理解しているため、より良いマッチングが期待できます。

買い手は、クリニックの経営に対する理解や医療機関の運営経験があることが理想です。特に、地域に根付いたクリニックであれば、患者の信頼を維持できる買い手を選ぶことが必要です。

クリニックの適正な評価

クリニックをM&Aで譲渡する際、その価値を正確に評価することが重要です。
クリニックの評価には、財務状況だけでなく、患者数、診療科目、設備の状態、従業員のスキルなども含まれます。
クリニックの将来性や地域での競争環境も考慮する必要があります。

また、譲渡価格の交渉では、売り手としての希望額と、買い手側の資金状況のバランスを取る必要があります。
売り手としては、自らのクリニックが長年培ってきた価値を適正に評価してもらうため、専門家のサポートを受けることが大切です。

譲渡後のサポート体制

M&Aでクリニックを譲渡した後、売り手がどのようにサポートするかも重要な課題です。通常、M&A後に一定期間、旧院長がクリニックに残り、買い手を支援するケースが多くあります。
これにより、買い手が患者や従業員との関係を築きやすくなり、事業承継がスムーズに進むことが期待できます。

また、譲渡後のサポート体制に関しては、契約時に明確に取り決めておく必要があります。サポート期間や業務範囲を明確にすることで、後々のトラブルを回避できます。

税務・法務の対策

どちらの承継方法を選ぶ場合でも、税務や法務の対策は欠かせません。
後継者に承継する場合、相続税や贈与税の対策が必要ですし、M&Aで譲渡する場合には譲渡益に対する課税が問題となります。
また、クリニックの土地や建物に関する名義変更や、スタッフの労務契約の引き継ぎなど、法的な手続きも重要なポイントです。

これらの問題をスムーズに解決するためには、税理士や弁護士、M&Aの専門家と連携することが不可欠です。
事業承継に関する法律や税制は複雑で、適切な対策を講じないと予想外の負担が生じる可能性があります。
早めに専門家に相談し、具体的な対策を立てておくことが重要です。

まとめ

個人クリニックの承継は、後継者に承継するか、M&Aによる売却を選ぶかで、注意すべき点が大きく異なります。
後継者承継の場合、後継者の育成や信頼関係の構築が重要です。
一方、M&Aの場合には、適切な買い手の選定やクリニックの評価がポイントとなります。
どちらの方法を選ぶにしても、事前の準備と専門家のサポートが成功の鍵となるでしょう。

クリニックの事業承継を検討している院長の方は、まずは早めの計画を立て、専門家と協力してスムーズな承継を目指しましょう。

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