2024年10月から、表1の通り、最低賃金が改定されることとなり、多くの企業に影響を与えることと思われます。
毎年10月に改定される最低賃金ですが、今回は2023年度からの上昇額が平均51円(昨年度は43円)となり、1978年の制度開始以降最高額となりました。
従業員の賃金が上昇することで、人件費の増加は避けられません。
しかし、適切な対応をすることで、企業の成長にも繋げることが可能です。
-
最低賃金の改定内容を理解する
まず、最低賃金の改定内容を正確に把握することが重要です。
今回の改定では、都道府県によって異なる上昇率となっています。
自身の事業所が属する地域の最低賃金がどの程度上昇したのか、詳細に確認しましょう。
-
従業員の賃金を見直す
最低賃金の改定を受け、従業員の賃金を見直す必要があります。
最低賃金に満たない従業員がいる場合は、速やかに賃金を引き上げる必要があります。(最低賃金法による罰則もありますのでご注意下さい)
また、最低賃金に達している従業員であっても、物価上昇などを考慮し、賃上げを検討することも重要です。
最低賃金以上となっているかの確認方法は以下の通りです。
【パート・アルバイトなど時給で働いている方】
時間給≧最低賃金となっているかを確認します。
【日給で働いている方】
日給÷1日の所定労働時間 ≧最低賃金 となっているかを確認します。
(例)日給1万円で1日8時間労働であった場合は
1万円÷8=1,250円 ≧最低賃金 となります。
【正社員など月給で働いている方】
まず給与のうち対象となる額を確認します。
最低賃金を計算するときに対象となるのは原則、下図のような「所定内給与」です。
具体的には、実際支払われる賃金から次の賃金を除外したものが最低賃金の対象となります。
①臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
②1カ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
③所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
④所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
⑤午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
⑥精皆勤手当、通勤手当及び家族手当
出典:厚生労働省HP
この所定内給与を基に
月給のうちの平均賃金の対象額÷月の平均所定労働時間≧最低賃金額となっているかを確認します。
(例)所定内給与が18万円、年間所定労働日数が245日、1日の所定労働時間が8時間の場合は
18万円÷(245×8時間)/12月=1,102円 ≧最低賃金額となります。
-
人件費増加に対応する
賃金の上昇は、企業にとって大きな負担となります。
人件費増加に対応するためには、以下の対策が考えられます。
業務効率化
生産性向上や業務の自動化など、人材を効率的に活用するための施策を検討しましょう。
価格転嫁
原材料費や人件費の上昇分を価格に転嫁することが考えられます。
ただし、顧客への影響や競合とのバランスを考慮する必要があります。
助成金制度の活用
政府が提供する助成金制度(業務改善助成金、キャリアアップ助成金など)や支援制度(賃上げ促進税制)を活用することで、人件費の負担を軽減できる可能性があります。
-
従業員のモチベーション向上
賃金は従業員のモチベーションに大きく影響します。
適切な賃金水準を維持することで、従業員のモチベーション向上に繋げることが重要です。
従業員の声を聴く
定期的な面談やアンケートなどを実施し、従業員の意見や要望を把握しましょう。
評価制度の改善
従業員の貢献度を適切に評価し、賃金に反映させることで、モチベーションを高めることができます。
福利厚生制度の充実
従業員が安心して働けるように、福利厚生制度の充実を図りましょう。
最低賃金の改定は、企業にとって大きな変化をもたらします。しかし、適切な対応を行うことで、企業の成長に繋げることが可能です。スムーズな対応を進めていきましょう。
【表1】
出典:厚生労働者省HP