令和5年のマンション総合調査結果によると全国のマンションの居住の世帯主の年齢は60歳代が27.8%ともっとも多く、次いで50歳代が23.7%、70歳代が21.7%となっています。
相続がおこる可能税が高い高齢世代にもマンション居住者が多くなっていることがわかります。
そこで今回は改めて2024年度改正で見直しが行われた居住用の区分所有財産の評価についてお話したいと思います。
居住用区分所有財産の評価が見直された背景
【マンション購入による相続税節税】
これまで、相続税節税の一環としてマンションを購入するという手法がよく用いられてきました。
節税の方法はこうです。
例えば、現金で1億円財産があると相続税の評価額上も1億円で評価されます。
しかし、その1億円の現金でマンションを購入すると1億円よりも低い額で評価されます。
相続税の評価額上、土地は時価ではなく路線価(時価の80%程度)、建物も時価ではなく固定資産税評価額(時価の70%程度)で評価されるからです。
この時価と相続税評価額の差を利用したのが、マンションの購入を利用した節税の仕組みです。
【タワーマンション購入による相続税節税】
またマンションの中でもタワーマンションは節税効果が大きくなります。
というのも、タワーマンションは土地面積あたりの総戸数が多くなります。
土地の相続税評価額は各部屋の専有面積に基づいて割り算されるため、結果として、低層のマンションよりもタワーマンションの方が土地の評価において時価との差額が大きくなります。
また、実際売却する際には、タワーマンションは高層階ほど高額で取引されるため、より大きな節税効果を見込んで富裕層の間でタワーマンションの高層階を購入する節税方法(いわゆるタワマン節税)が多く行われていました。
【最高裁判所判決】
しかし2022年4月19日に最高裁判決でタワーマンション購入により本来2億円程度あった相続税が0円となった事案で、タワーマンションは時価と著しい乖離があるため鑑定額による評価方法とするべきとする国税庁側の主張が認められ、相続人らの敗訴が決定しました。
このことをきっかけに本格的にマンションの相続税における評価方法が見直されることになりました。
2024年税制改正による影響
2024年1月1日以降の相続・贈与から、区分所有マンションの評価方法が改正されました。主な改正点は以下の通りです。
・乖離率の導入: マンションの評価額に「乖離率」が導入され、市場価格(時価)との乖離を抑制する方向に進みました。
・評価水準の導入: 評価水準が設定され、評価額が過度に低くなることを防ぐ仕組みが導入されました。
具体的な評価方法
【算式(自用の場合)】
価額=区分所有権の価額(①)+ 敷地利用権の価額(②)
①従来の区分所有権の価額 × 区分所有補正率※
②従来の敷地利用権の価額 ×区分所有補正率※
※区分所有補正率は評価水準(評価乖離率の逆数)によって3つに区分され、その区分に応じて評価乖離率に一定の数をかけたものです。
評価乖離率(市場価格が相続税評価額の何倍か)や区分所有補正率の詳細な計算方法については少々複雑なため割愛しますが、高層階で築年数が浅いなど市場価値が高いマンションについては評価が高くなる計算式となっています。
この評価方法の適用がないもの
・構造上、主として居住の用途に供することができるもの以外のもの(事業用のテナント物件など)
・区分建物の登記がされていないのも(一棟所有の賃貸マンションなど)
・地階(登記簿上「地下」と記載されているものをいいます。以下同じ)を除く総階数が2以下のもの(総階数2以下の低層の集合住宅など)
・一棟の区分所有建物に存する居住の用に供する専有部分一室の数が3以下であって、その全てを区分所有者又はその親族の居住の用に供するもの(いわゆる二世帯住宅など)
・たな卸商品等に該当するもの
※借地権付分譲マンションの敷地の用に供されている「貸宅地(底地)」の評価をする場合などにも、この評価の適用はありません。
まとめ
マンションの評価方法が改正されたことにより、タワーマンションを購入することによる大幅な節税効果は見込めなくなりました。
ただ、マンションなどの不動産は現金や有価証券よりも相続税評価額が低く算出されるというメリットがまったくなくなったわけではありません。
今後はさまざまな手法を組み合わせて相続対策をする必要があります。