コラム
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2024.08.14

空き家特例の見直し

総務省が今年4月に発表した住宅・土地統計調査結果(速報値)によると、日本全国の空き家率は13.8%(2023年10月1日現在)で過去最高値を更新したそうです。

そこで今回は改めて空き家の譲渡所得の特例についてお話したいと思います。

はじめに

2016年から施行されている「空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除の特例」は、相続した空き家を売却する際の譲渡所得を最大3000万円まで控除できる制度です。

この特例は、空き家の流通促進や有効活用を目的として設けられ、多くの利用者から好評を得てきました。

しかし、特例の適用期限や控除額、適用要件等について、様々な議論がされており、2023年の税制改正で、特例の一部見直しが行われました。

ここからは空き家特例の概要、2023年の改正内容、特例の今後の見通し、そして特例を活用した空き家売却のポイントについて、順にみていきます。

空き家特例の概要

特例の内容

被相続人の居住用家屋及びその敷地等を相続した場合、一定の要件を満たせば、譲渡所得から最大3000万円を控除することができます。

 適用要件

特例対象となる家屋・その敷地

・特例の対象となる「被相続人居住用家屋」とは、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋で、次の3つの要件すべてに当てはまるもの(主として被相続人の居住の用に供されていた一の建築物に限ります)をいいます。

  • ①昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  • ②区分所有建物登記がされている建物でないこと
  • ③相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと

※要介護認定等を受けて老人ホーム等に入所するなどしていた場合でも一定の要件を満たせば、特例の対象となる「被相続人居住用家屋」に該当します。

・特例の対象となる「被相続人居住用家屋の敷地等」とは相続の開始の直前において被相続人居住用家屋の敷地の用に供されていた土地またはその土地の上に存する権利をいいます。

特例の適用を受けるための要件

(1)売った人が、相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得したこと。

(2)次の①、②または③の売却をしたこと。

①相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。

家屋については次の2つの要件に、敷地等については次のイの要件に当てはまることが必要です。

イ相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと。

ロ譲渡の時において一定の耐震基準を満たすものであること。

②相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋の全部の取壊し等をした後に被相続人居住用家屋の敷地等を売ること。

家屋については次のイの要件に、敷地等は次のロ、ハの要件に当てはまることが必要です。

イ相続の時から取り壊しの時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと

ロ相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと

ハ取り壊し等の時から譲渡の時まで建物または構築物の敷地の用に供されていたことがないこと

③相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋を売るか、被相続人居住用家屋とともに被相続人居住用家屋の敷地等を売る場合で、次のイ、ロおよびハの要件にあてはまること

イ相続の時から譲渡の時まで事業の用、貸付の用または居住の用に供されていたことがないこと

ロ譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、一定の耐震基準を満たすこととなったこと

ハ譲渡の時からその譲渡の日の属する年の翌年2月15日までの間に、被相続人居住用家屋の全部の取り壊し等を行ったこと

※令和6年1月1日以降に行う譲渡に限ります。

(3)相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること

(4)売却代金が1億円以下であること

※分割して売却した場合などは注意が必要です。

(5)売った家屋や敷地等について、相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと

(6)同一の被相続人から相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等について、この特例の適用を受けていないこと。

(7)親子や夫婦など特別の関係がある人に対して売ったものでないこと。

 特例のメリット

 ・空き家を売却する際の譲渡所得が大幅に軽減される

 ・空き家の売却が促進され、空き家問題の解決に貢献する

 ・相続人が空き家を有効活用しやすい環境となる

2023年の改正内容

 適用期限の延長

当初、特例の適用期限は2023年12月31日までとされていましたが、2023 年の税制改正で、適用期限が4年間延長され、2027年12月31日までとなりました。

 取り壊しの時期

以前は建物がある場合、耐震改修(すでに耐震性がある場合は不要)をするか除却を行った場合のみ特例の対象でした。

しかし、2024年1月1日以降に譲渡される家屋については、その譲渡の翌年2月15日までに耐震改修または除却工事を行った場合も適用可能になりました。

 相続人複数の場合の控除額の変更

2024年1月1日以降に行う譲渡で、被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を相続または遺贈により取得した相続人の数が3人以上である場合は、特別控除額の上限が1人あたり2000万円に引き下げられます。

空き家特例の今後の見通し

空き家特例は、今後も状況を見ながら見直しが行われる可能性があります。

具体的には、以下の点が議論されています。

  ・特例の恒久化

  ・適用要件の更なる緩和

  ・控除額の増額

特例を活用した空き家売却のポイント

空き家特例を活用して空き家売却を行う際には、以下の点に注意する必要があります。

  ・適用期限を確認する

  ・耐震基準を満たしていることを確認する

  ・相続人が複数いる場合は、控除額の変更に注意する

  ・早めに売却活動を開始する

まとめ

空き家特例は、空き家問題の解決に役立つ制度ですが、特例の適用時期、要件、控除額等が変更されています。

空き家売却を検討している場合は、最新の情報を確認し、適切な対策を講じることが重要です。

 

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