はじめに
2022年10月から段階的に施行されている、短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大ですが、2024年10月には、さらなる拡大が予定されています。
この制度改正は、多くの短時間労働者に大きな影響を与えるものです。
今回は、適用拡大の背景、内容、スケジュール、そして企業・労働者への影響について、解説します。
-
適用拡大の背景
少子高齢化や働き方改革の進展に伴い、短時間労働者の数は増加傾向にあります。
しかし、従来の社会保険制度では、一定の勤務時間未満の労働者は加入対象とならず、十分な社会保障を受けられませんでした。
そこで、政府は2019年に「働き方改革関連法」を成立させ、短時間労働者に対する社会保険適用拡大を推進。
加入対象者の拡大、加入要件の緩和、任意加入制度の拡充などを段階的に実施しています。
-
適用拡大の内容
適用対象者の拡大
2024年10月から新たな加入対象となる従業員は、パート・アルバイトの方のうち以下の全てにチェックが入った方です。
3.適用拡大のスケジュール
※厚生労働省HPより引用
-
企業・労働者への影響
企業への影響
・対象となる短時間労働者が増えるため、事務手続きの負担が増加する可能性があります。
・加入対象となる短時間労働者への社会保険料の負担が生じます。
・一方で、優秀な人材の確保や離職率の低下につながる可能性もあります。
労働者への影響
・社会保険に加入することで、病気や怪我、出産・育児、老後の生活に対して、より手厚い保障を受けることができます。
・厚生年金に加入することで、将来の年金受給額がアップします。
・一方で、給与から社会保険料が控除されるため、手取りが減る場合があります。
-
適用拡大に向けた準備
企業向け
・対象となる短時間労働者の把握
・社会保険加入手続きの準備
・従業員への説明会の実施
・社会保険料の支払い方法の検討
労働者向け
・社会保険制度に関する理解を深める
・加入手続きに必要な書類の準備
・社会保険料の負担について理解しておく
6.課題と今後の展望
社会保険の適用拡大には、いくつかの課題も存在します。
例えば、短時間労働者が増える中で、企業が社会保険料の負担を回避するために労働時間を減らす可能性があることや、適用基準を巡る運用の透明性が求められることなどです。
今後は、適用拡大の影響を見極めながら、さらなる制度の見直しや改善が行われることが期待されます。
特に、従業員数が50人未満の事業所に対する適用拡大については、引き続き議論が進められるでしょう。