はじめに
7月は所得税予定納税の支払い時期です。
しかし、今年6月までの業績等で判断して今年の所得が昨年に比べ大きく減少する場合には所得税の予定納税額を減額してもらうことができます。
そこで今回は所得税の予定納税と減額申請についてお話したいと思います。
所得税予定納税の基礎知識
まず、所得税予定納税の基本的な仕組みについて説明します。
予定納税の仕組み
予定納税とは、前年の所得に基づいて計算された税額を基に、今年の所得税を前もって納める制度です。
通常、予定納税は7月と11月の2回に分けて納付します。
前年の確定申告の際に、所得税額が15万円以上であった場合、予定納税義務が発生します。
※今年の予定納税の第1期分の納期は7月1日~9月30日までとなっています。
予定納税額の計算方法
予定納税額は、前年の所得税額を基に計算されます。
具体的には、前年の確定申告で確定した所得税額の3分の1が、7月と11月にそれぞれ納めるべき予定納税額となります。
この予定納税額は、前年の所得状況を元に計算されるため、今年の所得状況が前年と大きく異なる場合には、実際の所得税額よりも過大になることがあります。
予定納税の計算の基礎となる前年の合計所得金額には一時所得・譲渡所得・雑所得などは含みません。
予定納税の減額申請
予定納税額が過大であると判断される場合、納税者は減額申請を行うことができます。
次に、減額申請の具体的な方法について説明します。
減額申請の要件
次の1~4のような場合で、本年分の申告納税見積額が税務署から通知された予定納税額よりも少なるなると認められる場合や5のように同一生計配偶者分又は扶養親族分に係る予定納税特別控除額(1人につき3万円)を追加する場合は、予定納税額の減額を申請することができます。
1.廃業や休業、失業をした場合
2.業績不振などのため、本年分の所得が前年分の所得よりも明らかに少なくなると見込まれる場合
3.災害や盗難、横領により事業用資産や山林に損害を受けた場合
4.次の①~⑤のように、本年分の所得控除額や税額控除額が前年と比較して増加する場合
①災害や盗難、横領により住宅や家財に損害を受けたために雑損控除を受けられる場合
②多額の医療費を支出したため前年分よりも医療費控除額が増加する場合
③配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除など人的控除を新たに受けられる場合や、これらの控除の対象となる人が増加した場合
④社会保険料控除や生命保険料控除等の控除額が増加する場合や一定の寄付金を支出したため寄付金控除を受けられる場合
⑤住宅借入金等特別控除などを新たに受けられる場合や、これらの控除額が増加する場合
5.予定納税特別控除額(本人分3万円)に同一生計配偶者又は扶養親族(以下「同一生計配偶者等」といいます)に係る予定納税特別控除額(1人につき3万円)を追加する場合
なお、上記1.~5以外の場合でも、特殊な事情が生じたことにより、予定納税額の減額を申請することができる場合があります。
減額申請の手続き
減額申請を行うための具体的な手続きは以下の通りです。
申請書の作成: 所得税予定納税減額申請書を税務署から入手し、必要事項を記入します。申請書には、所得の減少理由やその金額を具体的に記載します。
証拠書類の準備: 6月末時点での試算表など所得の減少を証明するための書類を準備します。
申請の提出: 記入した申請書と証拠書類を税務署に提出します。
提出期限は、第1期分については7月31日まで、第2期分については11月15日までとなっています。(7月の減額申請を行ったあと現況に変化がなければ11月の減額申請を行う必要はありません)
今年に関しては定額減税のみ追加する場合(同一生計配偶者等の追加)は簡易的な方法により申請することができます。
減額申請の注意点
証拠の準備
減額申請が認められるためには、所得の減少を証明するための具体的な証拠が必要です。申請書だけでなく、売上の減少を示す帳簿や、経費の増加を示す領収書など、適切な書類をしっかりと準備しましょう。
申請のタイミング
減額申請は、提出期限が決められています。
この期限を過ぎると、減額申請が受理されない可能性があるため、早めに準備を進めることが重要です。
おわりに
所得税の予定納税の減額申請は、事業の状況に応じて適切に対応するための重要な手続きです。
所得の減少や経費の増加などの理由がある場合には、早めに税務署に相談し、必要な手続きを進めましょう。
また、減額申請が認められるためには、適切な証拠書類を準備し、申請期限を守ることが求められます。
計画的な対応を心掛け、スムーズに手続きを進めることで、無理のない納税を実現しましょう。