2024年12月に現行の保険証の新規発行が終了するのに伴い、厚生労働省はマイナ保険証の普及をすすめています。
しかしながら、まだ普及率は5%程度にとどまっています。
そこで今回はマイナ保険証の医院側のメリットとデメリット、また、現在普及の一環としておこなわれている一時金の支給制度についてもお話したいと思います。
マイナ保険証の概要と医院側のメリット
マイナ保険証は、マイナンバーカードに健康保険証の機能を持たせた新しい形の保険証です。
これにより、医療機関や薬局での利用が一層便利になりますが、患者だけでなく医院側にもメリットがもたらされます。
受付業務の効率化
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手続きの簡素化
マイナ保険証を利用することで、患者の保険情報や本人確認がスムーズに行えます。
従来の保険証では、情報入力や確認作業が必要でしたが、マイナ保険証の場合、カードリーダーを通じて自動で情報が読み取られるため、受付業務の手間が大幅に削減されます。
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デジタル化によるエラー減少
情報入力にはヒューマンエラーがつきものですが、マイナ保険証を使用することで、デジタルデータによる正確な情報管理が可能となります。
これにより、患者の情報が正確に記録され、誤入力や情報の見落としといったトラブルが減少します。
患者情報の一元管理と共有
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医療データの統合管理
マイナ保険証を活用することで、患者の過去の診療履歴や薬の処方情報が一元的に管理されます。
これにより、医師は患者の総合的な健康情報を把握しやすくなり、適切な診断と治療が行えるようになります。
特に、複数の医療機関を利用する患者にとって、この情報の一元管理は非常に有益です。
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情報共有の円滑化
マイナ保険証により、他の医療機関や薬局との情報共有が迅速かつ正確に行えます。
例えば、救急搬送された患者の過去の診療情報や薬のアレルギー情報などが即座に確認できるため、緊急時の対応がスムーズに進みます。
経営面でのメリット
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コスト削減
受付業務や情報管理の効率化により、人件費や紙ベースの管理費用が削減されます。
また、マイナ保険証を導入することで、保険請求の手続きもデジタル化され、請求業務の効率が向上します。
これにより、経営面でのコスト削減が期待できます。
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患者満足度の向上
マイナ保険証を導入することで、受付手続きが迅速に行われます。
これにより、患者のストレスが軽減され、医療機関のサービスに対する満足度が向上します。
患者満足度の向上は、リピーターの増加や口コミによる新規患者の獲得に繋がります。
医療機関側のデメリット
現時点ではまだ移行期間ということもありメリットばかりでなく、以下のようなデメリットもあります。
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公費適用患者への対応
現時点では各自治体が対応している子供医療費証明書などはマイナ保険証と一体化しておらず、確認は手作業で行わなければいけません。
そのため診療科によっては受付業務の手間が従前と変わりない場合もあります。
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薬剤情報
薬剤情報に関しては、電子処方箋対応の医療機関でなければ、過去1か月~5年の間の確認しかできず、直近のものに関しては結局お薬手帳の確認が必要となります。
技術的なトラブル
新しいシステム導入に伴う技術的なトラブルも無視できません。
カードリーダーの故障やシステムエラーが発生した場合の対策として、予備の手段を用意することが求められます。
一時金の支給について
厚生労働省は現在マイナ保険証の利用人数の増加に応じた一時金の支給を行っています。
2023年10月の利用率を起点として2024年5月~7月のいずれかの月のマイナ保険証利用人数の増加量に応じて、最大20万円(病院は40万円)の一時金が支給されるものです。
一時金を受け取るための申請は不要です。
支払い要件
・2023年10月から利用人数が一定数増えていること
・窓口での共通ポスター掲示
・患者さんへのお声かけと利用を求めるチラシの配布の徹底
※厚生労働省発表資料より
まとめ
マイナ保険証は、現状では患者さん側医療機関側双方にメリットデメリット両方の面があります。
ただ、今後現行の保険証に変わり広く普及がすすむと、メリットをもたらす重要なツールです。
今後の医療サービスの質の向上に向けて、マイナ保険証の導入と活用がさらに進むことが期待されます。