はじめに
2024年も半年を過ぎ、従業員への夏季賞与の時期ではないでしょうか。
賞与は多額になることがあるため、少しでも節税になればと考えられることがあると思います。
そこで今回は賞与を未払いとした場合の取り扱いについてお話したいと思います。
以下法人について記載しておりますが、個人のクリニックでも同様です。
従業員賞与の未払を損金とすることについて
従業員賞与の基本的な考え方
法人が従業員に支給する賞与(ボーナス)は、法人の業績や従業員の働きに対する評価の一環として非常に重要な役割を果たします。
賞与は基本給や手当と並んで、従業員のモチベーションを高めるための重要な手段です。しかし、法人にとって賞与の支払いは大きなコストでもあります。
そのため、賞与を未払いの状態で損金算入することは、法人の税務戦略上重要なポイントとなります。
賞与の定義
まず、賞与の定義について確認しておきましょう。
賞与とは、基本的には給与と同じく労働の対価として支給される金銭的な報酬ですが、通常は年に2回(夏と冬)支給されることが一般的です。
賞与の額は、法人の業績や個々の従業員のパフォーマンスに基づいて決定されることが多く、一律の基準はありません。
賞与の税務上の取扱い
賞与が支給されると、法人はその額を損金として算入することができます。
損金とは、法人の所得を計算する際に、収入から控除することができる費用のことを指します。
損金に算入できることで、法人の課税所得が減少し、結果として税負担が軽減されます。
未払い賞与の損金算入の要件
賞与が実際に支給されていない状態、すなわち未払いの状態であっても損金に算入することができる場合があります。
しかし、これにはいくつかの厳密な要件があります。
未払い賞与の要件
税務上、未払賞与を損金算入するためには以下の要件を満たす必要があります。
1.法人の決算期末までに支給額を従業員ごとに、かつ、すべての従業員に通知すること
(注1) 法人が支給日に在職する使用人のみに賞与を支給することとしている場合のその支給額の通知は、ここでいう「通知」には該当しません。
(注2) 法人が、その使用人に対する賞与の支給について、いわゆるパートタイマーまたは臨時雇い等の身分で雇用している者(雇用関係が継続的なものであって、他の使用人と同様に賞与の支給の対象としている者を除きます。)とその他の使用人を区分している場合には、その区分ごとに支給額の通知を行ったかどうかを判定することができます。
2.1で通知した金額を翌期が始まって1か月以内にすべての従業員に対して支払うこと
3.当期中に費用として経理処理すること
上記の要件を満たせば、夏、冬の賞与だけでなく、決算賞与も未払計上できます。
※ただし、賞与に伴い法人が負担する社会保険料については実際に賞与が支払われた月の末日の属する事業年度の損金の額に算入することとなりますので、翌期の損金となり、当期の損金にはできません。
要件を満たさなかった場合のリスク
要件を満たさずに未払賞与を損金算入しようとすると、後に税務調査で否認されるリスクがあります。
税務調査で否認された場合、その分の税額を追加で支払う必要が生じ、延滞税や加算税が発生する可能性もあります。
まとめ
未払賞与を損金にすることは、予想外の利益がでた時の節税対策として有効です。
しかし、適切な要件を満たさないと否認されるリスクもあります。
賞与を未払計上されたい場合は上記要件に該当するか今一度ご確認下さい。