はじめに
「賃金上昇が物価高に追いついていない国民の負担を緩和するため、デフレ脱却のための一時的な措置」として一人当たり2024年分の所得税3万円、2024年分の個人住民税1万円の減税実施が決定しました。
以前もご紹介しましたが、2024年6月1日以降で最初に支払われる給与・賞与から減税の対象となるため、給与の支払がある方で、6月分の支給がまだの方は支給前に再度確認しましょう。
まず減税制度を確認する前に、所得税と住民税の計算方法や徴収方法の違いを確認しておきましょう。
所得税の計算方法とは
その年の1月から12月の所得を基に計算されます。
給与所得者は給与の支払者が支払い時に支給額や扶養人数に応じて源泉徴収し、年間の所得が確定した12月に年末調整で源泉超過や不足を精算し1年分の所得税が確定します。
個人事業主や給与以外の所得がある人は原則確定申告を行い1年間の所得を申告により確定させて、それに応じた所得税額を自身で納付します。
住民税の計算方法とは
個人住民税は前年の所得を基に各市町村が税額計算をします。この点が所得税との大きな違いです。
給与所得者の場合は通常6月から翌年5月にかけて前年の所得により確定した住民税が給与より徴収されます。
個人事業主や給与以外の所得がある人は住所地の自治体から送付される納付書に基づいて6月の一括または6月、8月、10月、翌年1月の年4回に分けて納付します。
これらの違いにより、所得税と住民税では定額減税の方法が異なります。
また、給与所得者と個人事業主では減税の恩恵を受ける時期が異なります。
定額減税とは?
定額減税は、2024年6月から開始された新しい所得税・住民税の減税制度です。所得制限内に該当する納税者に対し、所得税と住民税所得割を1人あたり年間4万円を減税するものです。
従来の所得控除制度とは異なり、申告手続きが不要で、給与支払者や公的年金等の支払者が源泉徴収時に自動的に減税額を控除する仕組みです。
対象者
・2024年分所得税の納税者で、2024年分の合計所得金額が1,805万円以下の方(給与収入のみの方の場合、給与収入が2,000万円以下の方)
・国内に住所を有する個人または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人
減税額
・所得税:1人あたり3万円(対象となる扶養親族がいる場合には扶養親族の数×3万円が追加で減税されます。)
・住民税所得割:1人あたり1万円(対象となる扶養親族がいる場合には扶養親族の数×1万円が追加で減税されます。)
対象者となる扶養親族
・同一生計配偶者(合計所得金額が48万円以下:給与所得のみの場合年収103万円以下)
・扶養親族(合計所得金額が48万円以下:給与所得のみの場合年収103万円以下)
・16歳未満の子ども
給付措置
・減税しきれない場合、1万円単位で給付される
所得税と住民税所得割の少なくとも一方を納めており、定額減税しきれない額が生じる方に対しては所得税及び住民税所得割それぞれで減額しききれない額を算出し、合算の上1万円単位に切り上げた額が各市町村より支給されます。
所得税の減税方法
まず所得税では給与所得者の場合2024年6月1日以降最初に支払われる給与・賞与から源泉徴収税額が減ることになります。
一度に控除しきれないときは順次翌月へ繰り越されます。
個人事業主は2024年分の所得税に係る第1期分の予定納税額から控除します。
控除しきれない分は第2期分から控除します。
2024年の確定申告で年税額から控除することもできます。
住民税の減税方法
住民税は給与所得者の場合には2024年6月給与では特別徴収が実施されず、定額減税後の税額が2024年7月から2025年5月の11か月で徴収されます。
対して、個人事業主は6月から控除されます。
控除しきれない金額は8月(第2期分)以降順次控除されます。
定額減税のメリット
手続きが簡単:申告手続きが不要で、給与支払者等が源泉徴収時に自動的に減税額を控除
所得制限が比較的高い:所得控除制度よりも対象者が広く、多くの人が恩恵を受けられる
定額減税に関する注意点
所得制限がある:一定の所得を超えると対象外となる
扶養親族の要件が所得税の扶養親族の要件と異なる:16歳未満の子どもや一定収入以下の扶養親族が対象
一時的な措置:減税制度は2024年分のみとなっており、2025年分以降は実施されない予定
年末調整による一括調整は原則不可:定額減税は6月以降の支給給与等から必ず実施しなければなりません。年末調整のみで調整することは認められていません。
まとめ
定額減税は、所得制限内に該当する納税者にとって、恩恵を受けやすい制度です。
一方で、所得制限や扶養親族の要件など、注意点もいくつかあります。
従業員への給与支給の際には従業員の収入や扶養状況を確認し、減税額が適正であるか確認するようにしましょう。
また自身の確定申告の際にも所得制限や減税対象となる扶養親族について確認しましょう。