はじめに
クリニックの運営において、窓口未収入金は避けて通れない問題です。
これは、患者が診療費を支払わない、または支払いが遅れることで発生する未収入金のことを指します。
医師には応召義務があり、診療行為を求められたら原則として正当な理由がなければ拒めません。そのため、たとえ診察料を支払わない患者だったとしても、追い返すわけにいかず、結果として未収入金が発生するということがあります。
未収入金はクリニックのキャッシュフローに直接影響を及ぼし、多額になると、経営の健全性を損なう要因となり得ます。
この記事では、クリニックの窓口未収入金について、その原因、影響、および対策について詳しく解説します。
窓口未収入金の割合
医療機関の収入に占める未収入金の割合はどれくらいでしょうか。
厚生労働省「医療施設経営安定化推進事業 平成30年度病院経営管理指標」によると未収入金の割合は以下の通りとなっています。
収入の5%程度と聞くと少額であると考えがちですが、少額でも積み重なればクリニックの経営に影響をおよぼしかねません。
また1件1件が少額である場合、回収の手間等を考えて回収をせず放置しているクリニックもあるかもしれません。
まずは未収入金の原因を把握し、発生しないよう防止策を講じることが大切です。
窓口未収入金の原因
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経済的理由
一つの大きな原因は、患者の経済的な理由です。
予期せぬ病気や怪我でクリニックを受診すると手持ちがない等の理由で、支払いが難しくなる場合があります。
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保険の問題
保険請求において問題が発生することもあります。
例えば、資格喪失後の受診のため保険請求が却下されたり、保険の適用範囲を誤ってしまった場合には患者が自費で支払わなければならない金額が増え、支払いが滞る原因となります。
管理の問題
クリニック側の管理体制にも問題がある場合があります。
クリニックのスタッフが未収金の管理に十分な時間を割けない場合、未収入金の早期回収ができず、未収入金が増加する原因になります。
未収入金の影響
キャッシュフローの悪化
未収入金が増加すると、クリニックのキャッシュフローが悪化します。
結果的にクリニックの運営全体に支障をきたす可能性があります。
患者との関係悪化
未収入金が続くと、患者との信頼関係にも悪影響を及ぼすことがあります。
特に、保険の適用誤りなどでの支払いの催促が頻繁になると、患者が不快感を抱き、他のクリニックに移る原因となることがあります。
信頼関係が損なわれると、長期的な患者の確保が難しくなります。
未収入金対策
効果的な請求管理システムの導入
未収入金を防ぐためには、効果的な請求管理システムの導入が重要です。
電子カルテや会計ソフトを活用することで、保険請求と窓口負担額を管理し、ミスを減らし、効率的に未収入金を管理することができます。
クレジットカード・電子マネーの導入
患者の経済的な負担を軽減するために、クレジットカードや電子マネーの導入を検討することも考えられます。
これにより、患者側は手持ちがない場合でも支払いをすることができ、クリニック側も未収となるリスクを減らせます。
ただし、クレジットカードや電子マネーを導入すると手数料の支払いが発生するため、未収金額と手数料負担額の比較検討が必要となります。
保険の確認
患者の適用可能な保険を正確に把握することが大切です。
保険証の確認は毎月必ず行い、一定期間保険証の確認ができない場合は、医療費の全額をいったん支払っていただくことも検討する必要があります。
早期対応の徹底
未収入金が発生した場合は、早期に対応することが重要です。
未収入金が発生した時点で迅速に対応し、患者に連絡を取ることで、未収入金の増加を防ぐことができます。
また、早期に対応することで、患者との信頼関係を維持しつつ、問題を解決することができます。
おわりに
クリニックの窓口未収入金は、多額となると経営に大きな影響を及ぼす重要な問題です。
経済的理由や保険の問題、管理体制の不備など、さまざまな原因が考えられますが、効果的な対策を講じることで、未収入金の発生を抑えることができます。
請求管理システムの導入やクレジットカード・電子マネーの活用、早期対応の徹底など、具体的な対策を実施し、健全なクリニック経営を目指しましょう。