日本の経済環境の中で、中小企業の経営者や従業員が直面している課題の一つは、賃金の上昇が見られないことです。
この状況を改善し、経済成長を促進するために、政府は令和6年度の税制改正を通じて、賃上げを促進する税制措置を大幅に見直しました。
本ブログでは、その中心となる「中小企業向け賃上げ促進税制」について解説し、特に新設された「繰越税額控除制度」に焦点を当てます。
中小企業向け賃上げ促進税制の概要
令和6年4月1日以降の事業年度から適用されるこの税制では、中小企業が従業員の賃金を上げた場合、税額控除を受けられるようになります。
従来からあった税額控除率は最大で40%とされていましたが、くるみん認定若しくはえるぼし認定(2段階目以上)を受けている場合には、さらに5%上乗せが可能となり、最大で45%の税額控除を受けられるようになりました。
繰越税額控除制度の創設
特に注目すべきは、新たに創設された「繰越税額控除制度」です。
この制度により、賃上げによる税額控除を受けることができずに余った控除額を、最大で5年間繰り越すことができます。
これは、赤字の中小企業であっても、将来的に黒字に転じた際に、税制の恩恵を受けられるようにするためのものです。
制度適用の条件
この制度を利用するためには、いくつかの条件があります。
まず、賃上げを行った事業年度において、雇用者給与等支給額が前年比で増加していることが要件とされます。また、繰越控除を受けるためには、繰越を行う事業年度以後も継続して「繰越税額控除限度超過額の明細書」の提出が必要となります。
これは、赤字事業年度でも適用され、賃上げ以後も繰越額の管理を徹底することを求められます。
税額控除率の詳細
賃上げ率に応じて、税額控除率が異なります。
例えば、賃上げ率が1.5%以上の場合、基本の税額控除率は15%となりますが、教育訓練費用の増加や子育て支援等に関する特定の認定を受けている場合には、さらに控除率が上乗せされ、最大で45%まで税額控除を受けることが可能となります。
まとめ
中小企業向け賃上げ促進税制の拡充は、中小企業にとって大きなチャンスです。この制度を活用して、積極的に賃上げを行い、人材確保と企業成長を実現しましょう。